先日、某きのこ屋さんにお仕事でお話をうかがいに行きました。
きのこ作りというのは、野菜作りの裏作として始まったそうで、出稼ぎに頼らざるを得なかった秋から冬場にかけての農家の収入構造の改善、地域産業の勃興という意味合いでここまで普及してきたとのことです。
今年は夏が異常に暑かったら生育に支障は、と聞いたら、何のことはない、同社さんのぶなしめじ、えりんぎ、まいたけ、すべて屋内育ちなのだそうで。雑菌の心配もなく、そしてなんと一年を通じて生産は100%フル稼働なのだそうです。工業品の世界でもなかなかそんな工場はないですね。そして、秋は鍋などで需要が増加し、またスーパーなどで特設コーナーなどもできるから販売単価が上がり、また夏場は需要が減退するから価格を下げて売り切って、在庫リスクも国内ではほとんどないとのこと。驚き!味も特に変わらないのだそうです。そんな室内育ちのきのこたちのシェアは年々上がっているそうで、そんなきのこたちは、特に秋になったから、味が濃くなるとかそういうことではないのだそうで。それでは秋だから食べよう、ではなくて夏場にきのこをもっと食べておけば良いということではないか?!と思ったのでした。
では近頃、土瓶蒸しがおいしい季節となった松茸さんですが、こちらは菌糸の構造が複雑で、あいにくまだ人工的には作れないようです。松茸も人工的にできるようになったら、ありがたみが減ってしまいそうですね。
また、いろいろな種類のきのこを食べるのは、日本とアジアの国の一部でしかなく、例えば米国の「きのこ」市場というのはホワイトマッシュルームが98%を占めるということも知りました。もったいないですね。
興味があったのは、それでは並み居るきのこ作り農家の中から、どうして一握りの会社が会社形態となりえて、上場まで成し遂げるような企業まで出てきたのか、という点です。こちらも聞いてみました。
きのこは鮮度が命なので、パッケージングしてからディストリビューションまで、いかに短納期で消費者にお届けするかというのが勝負なのだそうです。我々が訪問した会社は創業して数年後、3000tから5000tという大型パッケージング設備計画に対して、銀行が賛同して融資に応じてくれて、一気に同業者とは違う生産販売構造を成し遂げることができたのだ、とのことでした。
創業者さんの先見の明がすごかったのですね。そしてそれを見抜いた銀行も。元銀行員としては、こういうお話、泣けました。