2010年12月4日土曜日

中国の経済成長率とルイス転換点について

ここ数週間、オフィスのお引越しがあり、お客さんの来日があり、カンファレンスへの出席があり、と多忙ですっかり、こちらさぼっておりました。この間に、ホームページがまた少しきれいになったので、ご覧になってくださいね。
さて、先日出た中国経済についてのセッションで、エコノミストの方が農村部での労働力が枯渇してきており(実際に内陸部に行くと老人と子供ばかりだそうで)、かなりの賃上げをしないと労働力が確保できないという「ルイス転換点」に中国経済は近づいてきた、と話されていました。

ただし新興国がルイス転換点を迎えた後も、成長は持続するのが一般的で、中国でもこれで成長が減速するものでもない、というご指摘でした。というのが、過去20年間の中国での平均成長率は年平均+10%ですが、この間の雇用者増加率は+1%に過ぎず、両者の差、つまり9%は労働生産性の上昇によるものとのことです。すなわち、これは労働生産性の低い農業などの一次産業から労働生産性が高い製造業へ人の移動が進んだからとのことです。さらにサービス業など第三次産業就業者が局面では、まだまだ生産性上昇率及び成長率は伸びる余地があるとのこと。調べてみると、日本のルイス転換点は1960年代初頭という記載をいくつか読みました。日本経済はそこからさらに経済の高度化と経済成長の両方を遂げたわけで、なるほどと思いました。

従来、中国では1.5億人の余剰労働力が政府にとっての最優先課題であり、社会不安のもとともなる懸念事項、とされてきたわけですが、もしこれが現実ではないとすると、政策の転換が考えられます。中国が人民元の切り上げについて、米国の挑発にも乗らずに慎重なのも、雇用不安が背景でしたが、このスタンスも変わりうるか、ということ。それから1.5億人分の雇用を確保する必要がなくなるとすれば、繊維など、生産性の低い労働集約的な産業から脱却し、付加価値の高い自動車などの産業へのシフトを早められるのでは、というものです。

国全体の生産性が上昇することにより、GDPの高成長が維持できるのだとすると、最大の輸出マーケットとして持つ日本にとっては暗い話ではないですね。もはや低い労働力を求めて工場を移転する先ではなくなったものの、これからますます消費地としての魅力は増すということですものね。