2012年4月24日火曜日

欧州危機なんて言わせない?! 欧州の進んだ電力事情

昨日、元岩手県知事の増田寛也さんのお話を聞く機会がありました。

同氏は日本創成会議の座長として、エネルギー対策としてアジア大洋州電力網(APPG)を進めていらっしゃいます。
本日の日経一面にも電力不足の記事が出ましたが、関電管内、北海道、九州の各地域でこの夏、電力需給がひっ迫しそうとのこと。電力の供給サイドの安定は喫緊の課題でもあり、現在、やや感情論も横行している「脱原発」、対する「原発維持」、という二項対立で立ち止まっている議論を前進させるものとして、注目したいところです。

さて、その「アジア大洋州電力網(APPG)構想」ですが、電力需要が大きく、高い技術を持つ日本だからこそ国際連携を主導できる、と始めに謳い、オーストラリアの太陽光、インドネシアの地熱、国内の洋上風力などを、どどーんと海底ケーブルなどでつなぐという、大胆な構想です。これで、ピーク時の余剰電力を融通しあうのが目的とのこと。
電力系統の問題は大丈夫なのかな、とか、日本が主導なんていうことになると現代版「南進策」みたいな誹りを受けるのではないか、なんていらん心配してしまいますが。

これに対し、孫正義さんはモンゴルで発電して安い送電網で引っ張ってくれば、と提案されており、それに対して、このAPPGグループは「地勢学的リスク」(特に通る場所ね)を指摘しているそうです。

APPG構想を大胆とは申しましたが、実は欧州のスーパーグリッドはかなり進んでいます。右記は海上のグリッドのみを示していますが、赤は敷設済。さらにモロッコ等から太陽光で発電した電力を引っ張ってくるというグリッドが計画されています。欧州各地域は、このスーパーグリッドで結ばれ、風力(北海周辺)、バイオマス(欧州東部)、太陽光(地中海沿岸)など、各国の特徴ある再生可能エネルギーをつなぎ、不足分を火力で補う、という相互補完体制を構築しています。

さらに面白いのは、スコットランドのようにベンチャー企業とファンドを呼び込んで、欧州全域の電力需要の10%を賄うという計画を立てたり、スペインのように国内の発電関連ベンチャーの海外展開を政府が後押ししたり。再生可能エネルギーを経済成長の機会として大いに活用しようとする力強い動きがあるようです。

特に電力の世界では欧州に学ぶことは多そうですね。










2012年4月19日木曜日

フランスの70歳代の素敵な不良おばちゃまからの警鐘

本日は、イマジンの笹川社長の女性経営者を集めたランチ会があり、初参加させていただきました。
スピーカーはフランス在住のユミ・シャローさん。

おじいさまは慈恵医大の創設者で、大変なお嬢様でいらっしゃるにも関わらず、ご自分で編み物を売るなどして集めた200万円(当時)をも とに、単身フランスに渡り、高田賢三さんの右腕として活躍。以後フランスに在住され、最近では、Vendome AoyamaのVdeBブランドの顔として、アクセサリーデザインなども手がけられています。

70歳を過ぎても頭脳明晰で、おしゃれで、お茶目で。すっかりファンになってしまいました。(写真左がユミさん)このバッグもお手製なのだそうです。そして何を隠そう、ユミさんの旧姓は髙木で、アルバチームの髙木とは姻戚関係。世の中狭いんですね。

ユミさんにとって、働くということは、ちょっと不良でいたいから。そしてイコール自立。働き手を一本に絞る「専業主婦」というあり方は最大のリスクテイクではないか、と今の若手女性の「安定」志向に警鐘を鳴らしていらっしゃいました。なるほど。
70歳過ぎても、こんな風にかっこよく、そして若者に迷惑をかけないでお仕事が続けられたらいいな、と思いました。

普段はお目にかかれないデザイナーさんや、アパレル関係の方々などともお話しできて、新鮮な会でした。

2012年4月12日木曜日

草がなくなったら草食男子もいなくなる?

気付いたら、またすっかりブログをさぼっていました。
本日、某投資銀行のセルサイドアナリストとして活躍されているO先輩とランチ。
先週、先々週と欧州とアジアを出張で廻られて、投資家とのミーティングをされたとのこと。日本に対する見方は非常にお寒いそうでした。
特に香港、シンガポールは、税務的観点から、日本人が出ているファンドもずいぶん増えていることを改めて認識されたとのこと。
今後、日本どうですかね?と伺うと、「イマドキの若者を草食、草食、なんていじめちゃいけないよね」「アジアに出て行っちゃったファンドマネージャーだけじゃなくて、そのうち食べる草もなくなったら、やむを得ず草食若者たちだってどんどん出て行って、日本はもぬけの殻になっちゃう」「草食だって、日本にいてくれるうちが花よね」。
うーむ、仰る通りですね。

日本でヘッジファンドの運用会社を設立しにくい理由は、何か調べてみました(METI議事録等より)。
①税負担が大きいことが第一に挙げられる。日本で運用会社を設立すると、ヘッジファンド・マネージャーは成功報酬を得ても、およそ75%を税金として納めなければならない勘定になる(運用会社としての法人税と個人所得税の合計)。シンガポールに設立した場合、税金の額はこの1/4程度で済み、その差は大きい。

②(今は廃止されたが旧投資顧問業法の下では)投資顧問業の一任ライセンス取得・維持にかかる事務的負担も非常に大きく、これも日本で運用会社が設立されにくい理由の一つ。

③他にも、日本は立ち上げ時のハードルが欧米に比べて高いという事情がある。ヘッジファンドは運用業界のいわばベンチャービジネスなので、立ち上げがしやすいかどうかが非常に重要な観点。利益に対する課税の問題は、利益を上げた段階での問題で、まずはファンド事業を立ち上げることができるかが重要。例えば、海外でヘッジファンドを設立する場合のシードマネーは、2,500万~3,000万ドルが一般的。成功報酬が入らなくても、1.5%の管理報酬で3~4人のチームは回せる。他方、日本ではシードマネーが10億円を超えることは稀で、経営が軌道に乗るまではマネージャーの手弁当に頼らざるを得ず、非常に厳しい(特に初年度の1年間)。

④また運用会社を設立する場合、目論見書に、恒久的施設(Permanent Establishment, PE)とみなされ課税されてしまうリスクを記載する必要が生じる。以前に比べてPE二重課税の問題は改善されているとは言え、海外投資家に対して二重課税リスクを明記しなければならないのは、資金募集に当たって極めて不利なこと。従って日本のファンド・マネージャーは、リスクを明記する必要のないシンガポールなどに設立することになる。
などなどです。

日本からの頭脳流出を止めるには、規制緩和や税制改正だけで不十分かも知れないのですが、大きな一歩であることは確かだと思われますね。まだ今は「残り草」があるから「草食くん」たちも日本に残っていてくれるのでしょう。草食もいて、肉食も群がっているような健全な生態系の国に日本戻ることを祈りつつ(肉食女子より)。