2012年4月12日木曜日

草がなくなったら草食男子もいなくなる?

気付いたら、またすっかりブログをさぼっていました。
本日、某投資銀行のセルサイドアナリストとして活躍されているO先輩とランチ。
先週、先々週と欧州とアジアを出張で廻られて、投資家とのミーティングをされたとのこと。日本に対する見方は非常にお寒いそうでした。
特に香港、シンガポールは、税務的観点から、日本人が出ているファンドもずいぶん増えていることを改めて認識されたとのこと。
今後、日本どうですかね?と伺うと、「イマドキの若者を草食、草食、なんていじめちゃいけないよね」「アジアに出て行っちゃったファンドマネージャーだけじゃなくて、そのうち食べる草もなくなったら、やむを得ず草食若者たちだってどんどん出て行って、日本はもぬけの殻になっちゃう」「草食だって、日本にいてくれるうちが花よね」。
うーむ、仰る通りですね。

日本でヘッジファンドの運用会社を設立しにくい理由は、何か調べてみました(METI議事録等より)。
①税負担が大きいことが第一に挙げられる。日本で運用会社を設立すると、ヘッジファンド・マネージャーは成功報酬を得ても、およそ75%を税金として納めなければならない勘定になる(運用会社としての法人税と個人所得税の合計)。シンガポールに設立した場合、税金の額はこの1/4程度で済み、その差は大きい。

②(今は廃止されたが旧投資顧問業法の下では)投資顧問業の一任ライセンス取得・維持にかかる事務的負担も非常に大きく、これも日本で運用会社が設立されにくい理由の一つ。

③他にも、日本は立ち上げ時のハードルが欧米に比べて高いという事情がある。ヘッジファンドは運用業界のいわばベンチャービジネスなので、立ち上げがしやすいかどうかが非常に重要な観点。利益に対する課税の問題は、利益を上げた段階での問題で、まずはファンド事業を立ち上げることができるかが重要。例えば、海外でヘッジファンドを設立する場合のシードマネーは、2,500万~3,000万ドルが一般的。成功報酬が入らなくても、1.5%の管理報酬で3~4人のチームは回せる。他方、日本ではシードマネーが10億円を超えることは稀で、経営が軌道に乗るまではマネージャーの手弁当に頼らざるを得ず、非常に厳しい(特に初年度の1年間)。

④また運用会社を設立する場合、目論見書に、恒久的施設(Permanent Establishment, PE)とみなされ課税されてしまうリスクを記載する必要が生じる。以前に比べてPE二重課税の問題は改善されているとは言え、海外投資家に対して二重課税リスクを明記しなければならないのは、資金募集に当たって極めて不利なこと。従って日本のファンド・マネージャーは、リスクを明記する必要のないシンガポールなどに設立することになる。
などなどです。

日本からの頭脳流出を止めるには、規制緩和や税制改正だけで不十分かも知れないのですが、大きな一歩であることは確かだと思われますね。まだ今は「残り草」があるから「草食くん」たちも日本に残っていてくれるのでしょう。草食もいて、肉食も群がっているような健全な生態系の国に日本戻ることを祈りつつ(肉食女子より)。